第五章 殺害動機

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   自分が置かれた状況を理解した富永は、快く酒出の申し出を受け入れた。 「この事件の始まりは、兄さんの会社の社長の息子がやらかした、レイプ事件だったな」 「今にして思えば、あれを隠蔽しなければ事件は起きなかったと……」  それを聞いて、酒出は話しを続ける。  その内容は、富永が先ほど語った内容をなぞり、確認していく作業だった。  芹沢社長の息子の暴行事件。  野口が鳴海 博子を暴行した事件。  それらを隠ぺいした事実。  松島 美和の暴行事件。  富永が隠ぺいを巧みに操作した事実。  美和による野口の脅迫。  野口の離婚。  美和の失踪。  野口の元妻との関係。  最近の野口の状況。  野口の遺体発見の状況。  そこまで確認したところで、酒出は一旦言葉を止めた。 「どうだ、 ここまで間違いは無いか?」 「遺体の発見に関しては、分かりませんが他に関して間違いありません」  富永にしてみたら自分が語った事を、なぞったので間違いなどあるはずがない。
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