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酒口の彼女である話しは、この場では伏せられたが有実と野口が口論していた事実は、警察は惑わされてしまった。
目撃者の男性は口論していたと言い、有実は絡まれそうになって逃げたと言った。
その食い違いは、見る側の受け取り方と判断された。
そして、その後の足取りが無いまま野口は、遺体として新川の川原で翌朝に発見される。
「ここで、仮定の話しを聞いてくれ」
酒出は、立ち上がり長机の周囲をゆっくりと歩きながら、事実でも語るかのように仮定の話しを始めた。
「野口は、兄さんと打ち合わせの後ホシに拉致され、大量の酒を飲まされた。つまみは、ピザを中心としたイタリアンだった」
「拉致しておいて、酒を飲ませてつまみまで出したんですか?」
富永は、酒出の仮定にいきなり疑問を投げ掛けた。
これから殺害しようとする相手に、酒を飲ませて食事までさせるのは、不自然だろうという考えからの否定であった。
だが、酒出は少しも動揺しない。
「ホシが野口に酒を飲ませたのには、二つの意味があるんだろう」
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