1006人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
酒出が唸りながら肯定する。
殺人の完全犯罪が、殺人によって暴かれた。
それが事実ならば、警察としては由々しき事実であり、マスコミの格好のネタになってしまう。
更には、当時の事件の関係者は吊し上げを食らうだろう。
「まさか、ホシの狙いはそれか?」
容疑者どころか参考人でさえ確定していない段階で、仮定とはいえ朧気な全体像が浮かび上がる。
酒出は、それが面白く無かった。
「そんなに、簡単じゃねえだろ……」
これから容疑者や参考人が多数出るであろう中で、何か誘導されている感覚に陥ってしまう。
それは、年末に起きた資産家婦人による狂言誘拐を捜査した時と、同じような感覚であった。
その時、刑事課に電話が入る。
受けたのは松本で、二言三言の短い会話で電話を切ると、すぐに酒出にその内容を報告した。
「野口氏の衣服から、女性の物と見られる毛髪が、数本発見されたそうです」
女性の毛髪と聞き、酒口は松島 美和を頭に浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!