第二章 容疑者

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           1    野口 久司の遺体発見から丸一日が過ぎ、色々な事実が発覚する中で警察内に新たな動きが見られた。  ある事件の容疑者が、今回の事件の被害者である野口に酷似しているという情報が、鉄道警察から捜査本部が置かれた八千代署にもたらされた。  今回の捜査本部の指揮を取るのは、千葉県警の柿崎 順次警視で県警でも指折りのキャリアである。  報告を受けた柿崎警視は、すぐに鉄道警察より担当者を呼び寄せ、直接報告を受けた。  鉄道警察の担当者は、緊張した面持ちで警視と対峙する。 「それで、その事件とは?」 「事件と言いますと多少の語弊があるのですが、県内で多発していた痴漢の容疑者が、今回の被害者である野口氏の可能性が高いと」 「痴漢の容疑者?」  担当者は、痴漢被害について説明する。  事件と言うと多少の語弊があると言ったのも、被害届が提出された訳じゃなく、いくつもの通報から照合し同一犯と判断したという事だ。  その犯人像が、野口 久司と酷似した。 「なるほど……」
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