第二章 容疑者

3/40
1006人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
   柿崎警視は、直接の報告を聞き考える。  一般的に言ったら、殺人事件の被害者が痴漢の容疑者だとして、互いの事件を関連付けて考えないものだ。  仮に痴漢の被害者が野口を痴漢と断定したとして、殺したいとまで考えるかというと、殺人の動機としては弱い。  しかも、その痴漢は同一の女性を狙わない。  長期に渡って痴漢行為を受け続け、相手に怨みを持ったなら動機となり得るかもしれないが。 「しかし、気になりますね……」 「では、警視は2つの事件に関連性が?」  鉄道警察の担当者が、色めきたって柿崎警視に問い掛けた。  自分達の考えが、事件解決の足掛かりになるかもしれないと、興奮しているのだろう。 「直接の関連性は、まだ認める訳には行きませんが、何らかの関係があるかもしれませんね」 「では、事件は……」 「捜査協力を願います」  柿崎警視は、担当者に二つの指示を出した。  2月13日の14時以降から終電まで、遺体発見現場にアクセス出来る路線で、野口の目撃情報が無いか確認。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!