京都一の美人

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「そういえば聞いたかい?」 「何をです?」 「なんでも、将軍様の護衛で浪士たちがわんさか京都に来るらしい」 「そうなんですか!?」 「極悪集団だから奏ちゃんは気をつけなよ。美人だから何されるかわかったもんじゃない」 「ちょっとアンタ!こんなとこで油売ってないで仕事して!」 店の奥から奥さんが出てきた。 「へぃへぃ。全く、口うるせぇ奴だな。俺ぁ、奏ちゃんみたいなしおらしい子を嫁さんにもらうべきだったよ」 そんな冗談を言いながら店に戻るおじさん。 私は、しおらしいと言われて苦笑いしか出来なかった。 なぜなら、この上品さは偽りのものだから。 小さい時に、長州藩の誰かに殺された父上が言っていた。 「愛想よくしていればみんな良くしてくれる」 って。
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