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「消音」
「ばか」って呟いた
その声を掻き消すくらい響く雨音
いつもは煩いその音が
この時ばかりは心地良かった
頬を伝う温かい雫石
何気なく窓の外を見詰めれば
ガラスを伝う冷たい雫石
雨に打たれる天窓に
哀れな今の私を重ねてみた
ただ軽い気持ちで送ったメールが
私に焦燥を与えてきた
薄暗い部屋で光る私の携帯
画面に映し出された受信画面
受信音すら掻き消す雨音に
ひとつ、雫石を溢した
end.
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