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「いつもと違う別れに」
駅の階段を降りていく君の後ろ姿を
僕はいつも見送るだけだった
遠ざかっていく姿に
声を掛けることが出来なかった
引き止めて、まだ一緒にいたい
その一言が怖くて言えなかったんだ
カツカツと君のヒールの音が静かな駅に響く
この電車を逃したら、といつも君は言うから
余計怖くて引き止める事が出来ない
臆病な僕
もうひとりの僕が僕を嘲笑う
そして今日も
いつもと変わらない別れ方
だけどやっぱり嫌だった
だから僕は一歩を踏み出す
遠ざかっていく姿を、遠ざかっていく足音を
今日の僕は追い掛けた
前を歩く君の姿を見付けて
僕の胸は早鐘を打つ
一歩、また一歩と距離が近付き
僕の手が自然と前に伸びる
届きそうで届かないこの距離がもどかしい
ほら、
いつもと違う別れ方があと少しで訪れる
君が振り返るより早く
僕の手は君の手を掴んだ
もう少しだけ一緒にいよう?
end.
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