一日め、実行

2/21
前へ
/500ページ
次へ
――その日は、とても寒い日だった。 歩く度に向かいから突き刺すような冷たい風に、少女はたまらず身を縮めた。 (早く帰りたい…) その理由は、ただ寒いから、それに尽きる。 少女が早々と足を進めていれば、不意にブレザーの胸ポケットが震えた。 一瞬寒さから体が震えたのだと思ったが、すぐに携帯だと理解した。 それでも少女は足を止めただけで、携帯に触れなかった。 「――…やっぱり帰りたくないかも」 少女の口から零れた呟きは、白い吐息に溶けて昇る。少女はしばらくそれを見つめ立ち止まっていた。 .
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

869人が本棚に入れています
本棚に追加