月落ち桜

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「南雲くーん、場所取りお疲れ様ぁ」 佐山美加がロングスカートを靡かせ、春の日差しを跳ね返すような笑顔を湛えながら現れた。 10時半…徐々にメンバーが集まりはじめる。 今日は、南雲と美加を含めて四人の男女が集まる予定である。 「南雲ぉ…何でこんなしょぼい桜の下に陣取るわけ?なぁ、香織ちゃん」 「中嶋くん知らないの?桜は七分咲き、このくらいが一番見ごろなんだよ…それにここからなら三本後ろの古桜もよく見えるし」 「げ…知らなかった」 原色ポロシャツにジーンズといういで立ちの中嶋雄介は、細身の長身をコミカルにくねらせる。 隣には、花見だというのにごくごく短いデニムスカートにダウンジャケットにロングブーツの藤田香織が落ち着かない様子で立っている。 香織はふと、三本後ろの桜に目をやった。 「まぁ始めようよ、雄介…バーベキューセット運ぼう」 南雲の一言で回りは準備に取り掛かる。 「りょーかいっ!七分咲きかぁ~言われて見りゃ悪くないねぇ」 雄介は、フットワークも頭も軽い大学生だ。 美加と香織は食材の準備をし始める。 「美加、お肉と野菜は?」 「車にあるよー取って来るね」 「あたしも行く」 正反対の二人が連れ立って歩く。 「なぁなぁ南雲ちゃん、美加ちゃんと香織ちゃん…どっちが好みなの?」 「…そういう目で見たことないな…雄介は?」 雄介は体をくねらせながら苦悩する。 「…うー香織ちゃん…かな」 隙あらばどちらもと顔に書いてあった。 「あんまり悪いこと考えてると怨みを買うよ~」 「怨み~?買いませんてば♪なんせオレは、日本一軽い男だからな」 頭の中身もな…南雲は、必死でその言葉を噛み殺した。
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