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バイト初日
翌日。
僕が母さんに連れられて行ったところは、とあるビルの地下にあるこじんまりとした事務所だった。どこか薄暗くて薄気味悪い。
少しビビる。
「失礼します」
母さんがノックし中へ入る。僕も続いて入ると、中は5つの事務机でもういっぱいいっぱいな位の、狭い部屋だった。机にはおじさんが4人座っていた。
「江田さん、お久しぶり、元気でした?」
「おお、久しぶりだねぇ、こっちは相変わらずですよ。」
年長者っぽい江田と呼ばれたおじさんは母さんに向かってにこやかにそう答えた。
ひとふたことの世間話のあと、
「この子が昨日話したウチの息子です」
そう母さんに突然言われて、緊張していた僕は、
「あ、生井健二です。よ、よろしくお願いします」
と、しどろもどろぎみに小さな声で挨拶した。
「私は江田、ここの責任者です。よろしくね。お母さんと違っておとなしそうな子だねぇ」
そう江田さんが言うと、母さんが
「そうなんですよ、図体ばかりでっかくなっちゃって。ビシバシやってくださいね」
そう突っ込みを入れた。
…確かに170センチで90キロある僕は、図体ばかりデカくて気が小さい。デカいカラダにコンプレックスさえ持っていた。
「いやいや、ウチにもデカいのに気の小さいのがいるから、コンビ組むのにちょうどいいんじゃないかな?おい、裕樹」
そう江田さんが言うと、ひとりおじさんが机を立ってこちらに来た。
目の前に立ったその人は、縦にも横にも僕よりひとまわり以上はでっかい。てゆうか、近くで見たらそんなにおじさんでもない。20代前半くらいかなあ?
「…どうも、斎藤裕樹です」
その人は、僕と同じくらい小さい声でそう挨拶した。
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