僕が乙女になった時

バイト初日

車の中。

ここでもずっと無言状態が続く。

…僕もあまり自分からしゃべったりする方じゃないんだけど、この状態はキツいよなあ。
となりをチラリとみると、横顔の斎藤さんはムスっとしているように見える。
やっぱなんか怖くて話しかけられない。

こんな緊張して無言のまま車ずっと乗ってたら車酔いしそうでちょっとクラクラしてきた。
そのまま、ふたりとも話さずに15分くらい走ると、とあるデパートに着いた。

車を停め、斎藤さんが降りる。
なんだかわからないまま僕も降りる。
斎藤さんはトランクから見たこともないような機械を出していく。
さすがにボケッと何もしないのはダメだと思い
「これから何するんですか？」
と聞いてみた。

「ああ、行ったら説明するよ」
ボソッと言うと、斎藤さんは機械の台車を押しながらノシノシと行ってしまった。
…なんだよ…僕、なんかよく思われてないのかなあ…
そう考えながら、急いで僕もあとを追いかけて行った。