晴れのち雨

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唇同士が触れようとした、 その瞬間だ。 重なってた手を、グッと強く握られた。 僕はハッとして止まる。理性が急に働き出し、顔を離して目をあけた。 斎藤さんは穏やかな表情をしている。 そして唇を少し開けると、 「…ミノリ…」 とつぶやいた。 僕はハッとして、顔を離した。 とっさに手も引いたつもりだったのだが、しっかり握られていて離れない。 …ミノリ… ひとの名前だろうか…女の子の名前? …誰なんだろう? 僕の手を握ったまま、また唇が開いた。 「…ずっと… 一緒にいるよ…」 とても優しい声で、そう言った。 恋人の夢でも見ているのだろうか… 突然、僕は自分が悪いことしているような気になった。 寝ている斎藤さんにキスしようとするだなんて… 斎藤さんはきっと普通で、女の子が好きなひとなんだ。 僕みたいな太った坊主の男なんか好きになってくれるハズがない。 ぬいぐるみもらったくらいで浮かれてる自分はバカみたいだ…。 そう思うと急に悲しくなってきた。 何とか引っ張って、握られてた右手も外した。
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