104人が本棚に入れています
本棚に追加
唇同士が触れようとした、
その瞬間だ。
重なってた手を、グッと強く握られた。
僕はハッとして止まる。理性が急に働き出し、顔を離して目をあけた。
斎藤さんは穏やかな表情をしている。
そして唇を少し開けると、
「…ミノリ…」
とつぶやいた。
僕はハッとして、顔を離した。
とっさに手も引いたつもりだったのだが、しっかり握られていて離れない。
…ミノリ…
ひとの名前だろうか…女の子の名前?
…誰なんだろう?
僕の手を握ったまま、また唇が開いた。
「…ずっと…
一緒にいるよ…」
とても優しい声で、そう言った。
恋人の夢でも見ているのだろうか…
突然、僕は自分が悪いことしているような気になった。
寝ている斎藤さんにキスしようとするだなんて…
斎藤さんはきっと普通で、女の子が好きなひとなんだ。
僕みたいな太った坊主の男なんか好きになってくれるハズがない。
ぬいぐるみもらったくらいで浮かれてる自分はバカみたいだ…。
そう思うと急に悲しくなってきた。
何とか引っ張って、握られてた右手も外した。
最初のコメントを投稿しよう!