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定食はウマい。
確かにウマいんだけれど、会話が全くないってのはどうももの足りないよな。
なんか会話のネタを探してみるも、ニコリともしない強面の顔を見てしまうとまたビビって話しかけるのをためらってしまう。
…この人は笑うことあるのかな…?
そんなことを考えていると、斎藤さんは定食をあっという間に平らげてしまった。
「…タバコ吸っていいかな」
「あ、はい」
確認するのと同時にタバコに火をつけた。食事の後のタバコはウマいってよく聞くけど、斎藤さんはウマそうに吸っていて、少し表情がゆるんだように見えた。
「ウマいすか?」
「ん?」
「あ、タバコ…」
気になってつい聞いてしまった。
「ウマいよ…あ、未成年は吸っちゃダメだぞ」
あれ…斎藤さんなんか少し微笑んだかも…気のせいかもしれないけど…。話しできるかも…。
「カラダでっかいっすねぇ、どれくらいなんすか?」
「んー、182センチで、体重は120くらいかな…」
「その割にはごっついですよねぇ~なんかスポーツやってたんですか?」
「…相撲やってたよ…君もごっついじゃないか」
「あ、僕は柔道してたんですよ」
あ、やった、初めて会話らしい会話できた。うれしいかも。斎藤さんのこと、少し怖くなくなった瞬間だった。
店を出て、
「ごちそうさまでした」
と頭を下げると
「いやいや、今日だけだから」
と返した斎藤さんは、また微笑んでくれたような気がした。
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