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タッタッタッと狭い階段を降りた。
足がこんなに重たいのは、きっと身体が拒絶しているからだ。きっとそうだ。…幸希はそう思いながら、リビングの扉を開けた。
ソファーに座って、お母さんはニッコリと笑っている。
「ねぇ、これはなんなの?」
お母さんが指を差した先には、放置された洗い物があった。
お母さんは夜の仕事をしているから、家事は基本幸希が担当することになっている。
しかし、昨日は夕飯後に新選組の小説に夢中ですっかり忘れてしまったのだ。
「あんたは私に洗い物をさせる気なの?」
蝶が綺麗にネイルアートされた爪がキラキラと輝いている。
『ごめんなさい…』
しかし、幸希の目の前まで来たお母さんの顔には既に笑顔は消え、怒りだけが満ち溢れていた。
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