《2》現れた最悪

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会場内の一年生はそんな自己紹介を聞きながらも未だ唖然としたままだ。 「生徒会長?」「あんな人が?」「ってか、爆発……」「何の意味があったんだ?」「あの台詞なに?」「アニメとか言ってなかったか?」「綺麗な人なのに」 ……各所から聞こえる呟き。 どうやら、あの生徒会長は新入生のハートを見事に掴み損ねたようだ。 ……いや、ある意味、かなり強烈な印象は与えられたのだろうけど。 「ふふふ、何だか面白そうな子ね」 ポケットの中のケータイからそんな声が聞こえて、僕は思わず睨み付ける。 「……リリ、人がいる所では声を出すなって言っただろ」 リリ───人工知能Re:Re:のことは出来れば他の人には見られたくない。 これほど小さな端末にありながらも会話可能なほどに確固とした知性。 そのスペックは既存のCPUとは比較することすら叶わない、言うなれば人工知能のハイエンドなのだ。 それゆえの極秘事項。 九条財閥研究機関、その責任者だった母が独自に開発した唯一にして究極の電子人格。 誰かに見られて、その存在が公に晒されるのはマズイ。 ───だがリリは、 「あら、ダイジョブよ。みんな、あの会長さんに釘付けだから」 周囲を見渡すと、確かに誰も僕らのことなんか見てやしなかった。 横にいるナオタとユーマは、何故かげんなりしたような顔でステージを見ている。
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