《2》現れた最悪

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入学式は、滞りなく終わった。 ……相変わらず、父さんは来なかったけど。 「仕方ないわよ。ほら、お父様は今、会社が……」 ケータイの中のリリが小言で言う。 僕は鼻を鳴らした。 「分かってるし、別に気にしてもいないよ」 クラスメートには小学校から一緒だった連中もいたが、学区が広がったせいで知らない顔がほとんどだった。 珍しく、僕も新鮮な気分になる。 式の後のHRでクラスメートの自己紹介が終わると、担任が言った。 「えー、午後からは生徒会主催の『新入生歓迎会』があるそうです。ということで、この後は体育館に集合して下さい」 担任が出ていくと、教室はざわざわと賑わいだす。 誰も彼もが新しい友人を作るのに夢中だった。 「ほらほら、シキ。早く友達作らないと乗り遅れちゃうよ」 リリがこっそりと、小馬鹿にするように言う。 「うるさいな……黙ってろよ」 しかし、僕はもともと積極的な性格ではない。 何となく手持ち無沙汰なまま、席に座っていると、見知らぬ生徒から声がかかった。 「オッス!」 そいつは、少し茶色がかった髪をしていた。 明らかに人為的な色だ。 ……入学早々、随分と気合いの入った奴だな、と思いながら顔を上げる。 満面の笑みが飛び込んできた。 「席、だいぶ御近所さんだな。ま、よろしく頼むぜ」 「え、ああ……」 「俺、春日。春日ナオタってゆーんだ。よろしくな」
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