《2》現れた最悪

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春日ナオタ。 随分と軽そうな男だった。 何となく気圧されてしまった僕は、愛想笑いを浮かべる。 「俺ら、隣町の小学校から来たんだ。だから、あんまり知り合いいなくてよー」 カラカラと、ナオタは笑う。      ・ 「……『俺ら』?」 複数形が気になった。 ナオタは僕の前の席の男子生徒を顎で指す。 「ああ、コイツだよ、コイツ」 彼は机に突っ伏して眠っていた。 ……熟睡しているように見える。 「おい、ほら、起きろって」 ナオタが少年の肩を揺する。 「んあ……」 その黒髪の少年はのそのそと顔を上げた。 「……んだよ、ナオタ。俺は眠いんだよ」 「おいおい、また徹夜かよ?」 「仕方ないだろ……昨日は観たいアニメがあったんだよ」 その少年の顔を見たとき、 ───何故か僕は、 強烈なシンパシーと共に、 何か居心地の悪さを感じた。 「ん……おまえ、誰?」 少年が眠そうな目で僕を見る。 「え……あ、九条シキ」 「そか──俺はユーマ。北山ユーマ、だ」 そう。 ──これが、僕と北山ユーマの邂逅。 僕の最悪の敵との出逢い。 ……自分の奥底に沸いたその感情が、 同属嫌悪という名を持つことを、 僕はまだ、知らない。      
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