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ナオタという少年はどうやらお祭り好きな性分のようだった。
体育館で行われるという『新入生歓迎会』の会場に入ると、ナオタは目を輝かせながら辺りをキョロキョロと見回していた。
「いやー、何をするんだろーな。なんかワクワクするよなー、こういうのって」
「……ふわぁ~」
対するユーマは、ナオタの隣で眠そうな顔をしている。
体育館は溢れかえる新入生でガヤガヤと騒々しかった。
と、不意に照明が落とされる。
「お、なんか始まるっぽいぜ」
ナオタがウキウキしながら言う。
新入生のざわめきが溢れる中で、
……それは起きた。
ド轟音ォォォォンッ!!
ステージの上で、爆発が起きた。
「へ……!?」
「な……!?」
「え……!?」
「きゃッ……!?」
僕のポケットの中のリリまでもが、驚きの声を上げる。
だが、幸いその声に気付いた人間はいないようだった。
騒然とする会場。
「なんだぁ、いきなり……?」
「げ……ナオタ、あれ見ろ」
不意にユーマが、嫌そうな声で言った。
その指が示す先は、ステージ上。
……蔓延する煙の中から現れたのは、1人の女子生徒の姿。
「ん……あれって……」
ナオタも驚いている。
どうやら、その人物は二人の顔見知りらしい。
しかし、何という派手な登場だ。常軌を逸しているとしか思えない。
たかだか新入生の歓迎会に、此所まで手の込んだ演出が必要だろうか?
髪の長い、大人びた体格の、綺麗な女性だった。
彼女はニヤリと笑うと、
───突然、マイクに向かって叫んだ。
「───アタシの歌を聴けぇぇぇッ!!」
「……」
「……」
「……」
「……え?」
……耳が痛くなるほどの静寂が、体育館に舞い降りた。
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