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その爆発は…平和で活気に満ちた世界を…一瞬の内に阿鼻叫喚の地獄へと変えた。
『曹さん!行きましょう!』
『うむ!』
清四郎は曹と共に…ホテルの外に出た。
そこで彼らが見たものは…
吹き飛んだ車の残骸と…爆発に巻き込まれ、傷ついた人々の姿だった。
時刻が朝だったせいもあり、負傷者の中には、子供の姿も多数見えた。
『曹さん…これは……』
絶句する清四郎に、曹鍾輝は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
『うむ……爆弾を使うのは、青藩の御家芸…認めたくはないが、間違いなく董厥らの仕業ですな…』
彼はそう唸った後…騒ぎを聞き付け、集まってきた配下の者達に、事細かに指示を出していた。
そしてそこに、劉と孫もやって来た。
『曹…これは…まさか…』
惨状を目の当たりにし、絶句しつつも…劉が腹から絞り出すような声で曹に聞いた。
『ああ…間違いない、董厥の仕業だ。奴ら…また上海に戻ったようだな』
曹は苦々しく、吐き捨てるように言った。
『あの男の宣戦布告と言う訳か…厄介な事になったな』
孫が黒煙を上げ、炎上する車の残骸を見遣りながら呟いた。
そして…この日を境に、上海のあちこちで…
紅藩の息の掛かった店や、繋りのある人間達が襲われる事件が 多発し始めた。
董厥率いる青藩は…その暴凶な牙を…再び紅藩へと向けたのだった。
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