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二人が学校近くの駐車場に着いたのは、既に予鈴が鳴り終えた頃だった。
二人が通う学校は、車での送迎は特別な理由と許可がない限り禁止されている。
特に遠方から通っているわけでも、交通機関のない不便な地域に住んでいるわけでもない実弥は勿論、許可など取ってはいなかった。
この駐車場も、学校付近とはいえそれなりの距離がある。
走らなければ確実に遅刻だ。
「転ばないようにね」
「だから何で私だけっ……!」
「有難うございました、行ってきます」
わざわざ車を降りてくれた母には悪いが、今は笑顔で挨拶を出来る状況ではない。
スクールバッグをリュックのように背負い、短距離走者のような前屈姿勢で学校までの道を疾駆する。
それなりに学力優秀な生徒が集う評判のいい学校だけあって、見えてきた校門付近に人影はなかった。
「祐樹が卵焼き食べるからこんなことにィ!」
「悪かったよ、ごめんね」
理不尽極まりない実弥の発言に言い返す余裕など、今の祐樹にはない。
返されたところで実弥も困るわけだが。
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