プロローグ

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剥がれ堕ちていった《何か》が、機体に取り付く。 次第に巨大になっていく《黒い何か》の正体が、コクピット付近に近付いてから思い出す。 しかし、今更になって思い出しても意味は無い。 彼は、後数十秒で《完食》される運命だろう。 『ランス01よりCP……俺の指揮権を、遊撃小隊の隊長に移し替えてくれ。喰われながら死ぬのは御免だからな……。』 『……CP、了解。中尉と共に戦えた事を、誇りに思う。』 互いに、必要最低限の挨拶を済ませ、左手で敬礼する。 CPは指揮権を変更し、ランス01は《黒い何か》と共に敵地へ跳躍する。 ブースターノズルから吐き出される燃料の残滓が、廃墟の街を染める。 特攻する彼が、最後に見た光景は《化け物》ではなく、果てしなく紅い三機のMTだった。
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