~始まりの時~

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刹那と空華は優が見ている先を見据え、何かを探すが動きも無く何の音も聞こえない。 「はぁ!?聞き間違いじゃろ!?」 刹那は優に視線を移す。たった今その場を見て何もないことを確認したが、刹那の表情に少しの怯えが現れていた。 「俺、聴力はいい方じゃよ」 優は至って真面目な顔で絶えず同じ場所を見続ける。 「俺にも何も聞こえんし、何もおらんじゃろ!?」 空華も優に促すが、反応を見せずに視線も変えない。 「……向こうに、……あの木の向こうに誰かいるで」 「誰が!?」 「解らん、解らんけど何でか、いるのは解るんじゃ」  優は二人と端的に会話を交わしはするが視線をその先から外さなかった。 「……なんかとても苦しそうな声じゃ」 そう呟くと優はゆっくり木の方へ歩きだした。 「ちょっと待てって!」 空華は優の様子がおかしいことに気づき走り出す。 「おい!待ってや!」 刹那も居ても立ってもいられず空華に続いて走り出す。 二人が優が先程までいた場所まで辿り着いた頃には、優は自分が指差していた木の向こうまで行っていた。 その場所に着いた優は立ち尽くし木の根元を見ている。 二人も優に追い付き、その視線の先を見た。
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