~始まりの時~

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「……な!!」 優の見つめる先を見た二人は声が出なかった。 そこに見えたのはヒトだった。外国人でも日本人でも見たことがない姿をしたヒト。 日焼けした位の薄茶の肌に少し尖った耳。銀色の流れる様な美しく長い髪を持つヒト。 人間に見えるが、その姿に人間なのかを疑ってしまう。 容姿にも驚いたが何よりも驚いたのはその体だった。見るに絶えない傷が無数にあり血に塗れ呼吸も浅い。 「なんなんじゃ!コイツ!?」 そんな血塗れの姿に完全に動揺している刹那が叫ぶ。 しかし空華も優も答える事が出来ない。二人は言葉を失っていた。 刹那は恐怖に駆られ後退りして行く。見えていない足元で地面から這い出た木の寝に引っ掛かり尻から転んだ。 転んだ拍子に刹那の手に何かの液体に浸かる。滑りを感じた液体に驚きその手を上げた。 刹那の手が真っ赤に染まっていた。目の前に傷だらけのヒトがいる事でそれが血だということに直ぐに判断が取れる。 「うわぁーーー!!」 刹那は手についた血を見て我を忘れ叫んだ。 空華もそれを目を見開き驚愕し、怯えていた。 「コ、コイツのか!?」 刹那は傷だらけのヒトを見ながら言う。しかし、血の流れが更に奥から来ていることに気付いた。 刹那は恐怖に包まれながらも静かにゆっくりと歩みを進め奥を見た。 「………ぎゃぁぁぁーー!!!」  刹那はそこにある何かを見た。そして今までに聞いたことのない程の声を張り上げた。 「逃げようや!!早く逃げようや!!」  混乱したかの様に泣き叫ぶ刹那。空華はそんな刹那を見て、何があるのかと歩み寄りその先を見た。 「…………ッ!!」
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