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三人を見る銀髪のヒトは静かに口を開く。
「………………」
何かを言おうとしているが、言葉が違うのか全く理解が出来ない。
銀髪のヒトは何かを考えるかの様に目を瞑る。
そして目を開くと小さく呟いた。
「……これでわかるか?」
三人は驚愕に襲われる。テレビでも写真でも見たことのない人間とは何か違うヒトが今、目の前で日本語を話した。
「しゃっ、喋った…」
「……日本語わかるんかや」
「あなたは誰?」
優は驚きに包まれながらも冷静を装い質問をする。
「…よく聞いてくれ。あまり長くはなさそう…だからな」
ヒトは一言言葉を吐く毎に苦痛に顔が歪む。その姿に三人は言葉が出なかった。
「この世界に施された封印があと幾年かで…壊れる。
封印が壊れれば……アザルの王は、この豊かな地を奪う為に侵略を始めるだろう……。
闇は…光を求める。闇に光が呑まれれば…、全ては終る。
シェマの子等…よ、来たるべき時、…闇を、王を、…止めて欲しい」
苦しそうに言葉を紡ぐヒト。段々と声に力が無くなって行く。
「急に何言ってんのか全く意味わかんねー!!」
「アザルとシェマ?王を止める?全てが終る?一体何なんだ?」
当然ながら、三人には意味が解る筈もない。しかしヒトは紡ぐのを止めない。
「アザルは我々の世界…、シェマそなたらの…世界。精霊の言葉を…聞くといい…」
「精霊って!?それは、何じゃ!?」
「……?精霊を知らないのか?
精霊は…そこら中にいるではないか?そなたらの中にも…」
言葉を途中で止め何故かヒトは微かに笑う。
その目には三人の困惑した表情を捉えていた。
「そうか…。幾千の幾万もの時が、シェマと精霊の絆を忘れさせたか…。それとも、あの遥か過去により精霊に見放された力が未だに残っているのか……」
発する言葉からはほとんど力が感じられなくなる。
「………すまぬが、私の…時間は余り残されて…いないようだ。……少年等よ、手を出してくれ…」
もう耳を澄まさなければ聞き取れない程、小さく弱いものだった。
「手を!?なんで!?」
「なんかあるんかや!?」
刹那と空華の頭の中は解らないことで溢れていた。
すかしその真ん中に立つ優は何も言わず手を差し出した。
それを見て二人も震わしながら静かに手を差し出した。
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