~始まりの時~

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あの場所から帰ったその夜、刹那は不思議な感覚に襲われていた。 「なんじゃこれ…?」 意識はあるが体の自由が利かない。 (……シェマの子よ…) 突然、頭の中から声が響いた。 「誰じゃ!?」 (シェマの子よ…汝の名を申せ…) 声は刹那の問いに答えることはなく言葉を続けた。 「誰なんじゃ!?シェマの子?」 自分の中から聞こえる声に驚きこそあるが、何故か恐怖は感じなかった。 (シェマの子よ…汝の名を申せ…。汝は我の契約者となる者…汝の名を申せ…) 「契約?何なんだこれ…」 (………名前言えと言ってるんだ!) 「うぉ!!」 (名前を言ってくれないと先に進めないのだ) 「??」 (早くしろ) 「早嶺刹那」 (早嶺刹那、汝を我の契約者とす。我名は時を操る精霊クロノス) 「…」 (やはり契約は面倒臭いな。何故に形式執らないといけないのかが解らない) 「あんた…誰?」 (ん?だからクロノス様だ。クロノス様と呼べ) 「クロノス…精霊…契約…はぁ!?」 (おい馬鹿) 「馬鹿…俺!?」 (他に誰がいる?) 「ちょいと成績悪いがいきなり馬鹿呼ばわりされる覚えはないけー。てかなんで俺の中にいる?」 (継承しただろ。因みに言っといてやるが、俺様にはお前の記憶や思考は全て見えるからな。結果やはりお前は馬鹿だ) 「…はぁ!?」 (本当にシェマは我々を忘れてるんだな) 「いや。全て見られてるとか嫌なんじゃこど。はよ出ていけや」 (俺様もお前みたいな馬鹿が契約者なんて最悪だ。しかもガキだしな。 俺様だって早く出て行きたいさ。 でも俺様達みたいな契約精霊は一回契約してしまうと契約者が死ぬまで出れないのだ) 「イラッとくるで!!」 (まぁそういうことで宜しく。せいぜい頑張れ) 「なんなんだ!この口の悪い奴は!ムカつくの~!」 (………) 「…無視かい」 馬鹿と罵られる刹那にも理解出来ていた。自分の中に自分ではない別の存在がいるということを。
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