~異変と精霊~

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突然、硝子を引っ掻く様な心地の悪い音が鳴り響く。 その音は空華が見つめる先から聞こえて来る。 音が鳴り始めると共に、その場所の景色が渦を巻くように捻れていく。 その捻れが止まったかと思った瞬間に、その場所が放たれたかの様に突如、口を開いた。 開いた穴の向こうは何も見えない一色の真っ暗な闇だった。 「……なんじゃありゃ?」 「……解らんよ」 好奇心だろうか、何故か二人は小声で会話をしながら、忍び足で近づいて行っていく。 二人が穴まで三十メートルくらいまで行った時、穴の中で何かが蠢いた。 (馬鹿共止まれ!) 「!?」 その声が刹那は直ぐにクロノスだと解るが、空華は驚いて辺りを見回す。 「誰じゃ!?」 「クロノスどうしたん!?」 (説明は後だ!お前ら馬鹿か!知らない物には近づくなと教わらなかったのか!?) 「……いや、……なんとなく」 刹那と空華が顔を見合せて話していると、穴の方から何かが落ちる音がした。 二人は驚き穴の方にゆっくりと顔を向ける。 そこには黒い塊の用な物が地面に落ちていた。 黒い塊が動き出し静かに起き上がる。 「「なっ!?」」 全身黒い毛に覆われた生き物。体長一メートル八十センチくらいで、手が四本、足が二本ある。 頭と思われる場所から開かれたところには二つの紅い目。 そして、口のある場所が開かれた。そこには鋭い牙があり涎を垂れ流している。 「…ば!化け物!!!」 立ち上がった黒い何かを見ていると、その後ろに更に二匹が鈍い音を発て地に落ちる。 (下級妖霊だ…。……何故、穴が) 「カキュウヨウレイ?」 (……説明は後だ!兎に角離れるぞ!! あいつらはアザルやシェマの肉を好む!!!早く走れ!!)
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