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「肉って…!?」
二人は顔を見合わせた後、全力で逃げ出した。
三匹の妖霊はその二人に気付くと獲物を狙う肉食獣の様に走り出した。
しかし、黒い何かはそこまで足が早い訳ではなかった。
良きも悪きも田舎である為に回りには大人の姿も子供の姿もない。
「どこに逃げればいいんじゃ!?」
「わからん!兎に角走ろうで!」
二人は叫びながら走り続ける。しかし学校から出ようとした時だった。
「どうしたん?」
そこにいたのは弟の哲の手を引いた優だった。
「!?」
刹那と空華は驚いて止まっていた。獅童哲<シドウテツ>、優の弟、小学三年生だ。
「優に哲!?なんでここに!?……てか今やばいんじゃ!!」
「え?何がやば……。あれは……。」
後ろから走る黒い異様な生物を見た優のその目は、冷たく悲しいものだった。
「とにかく逃げろって言われてる!説明は後じゃ!!」
「わっわかった!」
優は空華に促され哲の手を強く握り走り出した。
しかし小学六年生の足に小学三年生が着いて行けるはずがなく、一二歩走った所で哲は引き摺られる様に転んでしまった。
「痛~いー!!」
体を強く打ち哲は痛みから泣き出す。それを見て三人は止まざるをえない。
「哲立ってくれ!逃げないと!」
「痛いよ゙ー!走れんよ゙ー!」
その場に座り込んで哲泣き叫び出す。
「……やばいの」
その間にも妖霊は迫っており、三人との距離が二十メートルの所まで迫っていた。
「……どうしたらいいんじゃ」
三人が戸惑っていると、徐に優が口を開いた。
「二人は哲を連れて逃げてくれ!二人の足なら逃げれるから!俺が時間を稼ぐから!」
そんな優の発言に二人は肯定しない。
「おまえを置いて行けるか!!」
「同感」
近付いて来る黒い何かを前に三人が並ぶ様に立つ。
「二人供、馬鹿じゃ!……でもありがとう」
そんな三人の目の前で黒い何かは狙いを定める様に足を止めていた。
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