~異変と精霊~

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「でもどうしたら…」 いざ目の前にするとその荒々しい姿と息遣いに足がすくむ。 妖霊は汚く涎を垂らし、その顔は笑っている様にも感じられた。 その姿に恐怖が生まれ体が震え始める。 (……仕方ない馬鹿共だ) クロノスが呟いた途端に、頭の中でひびが入る様な甲高い音が鳴り響く。 その音が響いた後、周りに異変が起こる。 木々は揺れるのを止め、目の前の妖霊も動きを止める。そして垂れた涎すらも空中で止まっていた。 刹那自身も体の自由が利かなくなり思考だけが働く。 『『何んじゃこりゃ!!?』』 同じ状況に陥っているのか、空華と優の声が聞こえた。 (今、俺様の力で時間を止めてやった。契約者が馬鹿なせいであんまり長くは持たないがな) 『誰!?』 突然、頭の中に聞こえる声に優の思考が皆に流れる。 『儂の精霊クロノスじゃ!!てか優!?精霊と契約してないんか!?』 『精霊?契約?何それ?』 (…ん?…まぁいい。時間がないから説明は後だ。 手短に言うが、死にたくなければ戦え) 『戦えって!?あんなのとどうやって!?』 (死にたくないんだろ?なら戦え) 『だからどうやって!?』 (イル。いるんだろ?) (……ほい。クロちゃんやっほー!) (空華と言う子の守護精霊は目覚めてるよな?) (…うん!) (そいつに俺達には気を使わないでいいから力を貸すように言ってくれ。 俺達の力を貸してもコイツらにはまだ使えないからな) (…わかったよー。まだ死なすには、かわいそうだもんねー) 『何を話してるんじゃ?』 (馬鹿は黙っていろ) 『はぁ!?』 (取り合えず受け入れろ。自分の中に元々いる精霊だ。 ……守護聖霊よ、主に力を貸せ) クロノスの声と共に刹那と空華の内から、何か暖かい物が沸き上がるのを感じた。
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