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あれから二時間程経った。刹那と空華は川岸に上がり休んでいた。
優は下流の浅くなった場所に引っ掛かり流れに揺られながら眠っている。
「優ってほんとどこでも寝れるよのぉ」
そんな優を二人は不思議そうに見ていた。
「それがアイツの長所じゃろ」
「長所なんかのぉ?まぁ声を掛けるまで起きなさそうじゃろうな」
「簡単には起きんじゃろーな」
二人は会話をしながら優を見つめ笑っていた。
優は寝相も寝起きも悪くはないし、起こせば素直に起きる。でも自分では中々起きないのだ。
暫く優を見ていたが飽きたのか刹那は急に立ち上がった。
「夏休みに入ったから遊びまくるでー!!」
突如叫ぶ刹那を下から見上げながら空華が呟く。
「……あ、刹那?宿題は一人でやれよの。俺は手伝わんで」
発せられた言葉に驚き、刹那は視線を空華に向ける。
「え!?何を寝ぼけたこと言っとるんかや!?皆でした方が早いじゃろ!?」
顔を近付けて来る刹那に空華は冷たく返す。
「おまえ何もせんじゃろ…」
痛いところを突かれたのか、刹那の表情に焦りが生まれた。
「何を言うか!儂だってやる気になればのー!……とにかく皆でやるべきじゃ!」
刹那は必死に訴えるが空華は流す様に適当に答えた。
「はいはい」
二人がそんな他愛もない話をしていた時だった。
寝ていた優は突然、浮き輪から飛び起きた。
「どしたん!?」
急に起きた優に驚き刹那はその場から声をかける。
「……」
刹那の言葉に反応を見せずに優はその場に立ち尽くし、対岸を見ていた。
「……声が、……声が聞こえた」
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