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「……来たか」
オルロックは嗄れた声で言う。
その伯爵の発言と同時であった。
見据えていた先の扉が乱暴に叩き開けられたのは。
そこに立つのは上から下まで真っ黒な少女が一人。
伯爵が何かを呟くその前に、静かな部屋に響くは発砲音。
空薬莢が落ち、きんきんと響く。
その黒い少女の右手には、銃口から白い煙が揺らぐUZI短機関銃が握られていた。
9㎜パラベラム弾により上半身が血達磨になったオルロック。
しかし、その肉塊は驚異的なスピードで再生治癒し、服が穴だらけになっている以外は先程と変わらない。
「……随分と荒い挨拶だ」
でんぐり返った目玉をぐるりと戻し、少女を見る。
が、黒い少女は困った様に眉間に皺を寄せる伯爵を無視して弾の切れたUZIを床に投げ捨てる。
「淑女ならばもう少し礼儀を心掛けた方がよいぞ。 …“彼”は敵である私にも礼儀正しくしてくれたのだが」
口を不機嫌そうに横一文字に閉じた少女を見て、伯爵はこめかみに人差し指を当てて言った。
頬杖を付き、そう語る伯爵を見て少女は面倒くさそうに溜め息をつく。
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