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「…撃たないのか」
嗄れた声がほの暗い空間に響いた。
「殺す前に一言聞いていいか」
そのカーミラの問いに伯爵は「何なりと」と答える。
「アンタ…何で関係ない戦いに頭突っ込むんだい? それと、何で私を引き入れたいんだ」
「質問は一言じゃなかったのか」
その伯爵の言葉に「揚げ足とるんじゃないよ」とカーミラはジト目で呟く。
そして、伯爵は目を瞑って、ゆっくりと開きこう言った。
「誰もが平等な世界の為に」
一言。 そうハッキリ断言してみせた。
その一言を聞いた彼女の目は驚いた様にまん丸になっていた。
だが、だんだんとそのまん丸は三日月の形にへと歪んでいった。 それに従い、口の両端も上へ上へとつり上がって歪む。
そして、彼女は狂気を沈めた邪悪な笑みで言った。
「伯爵さんよぉ……そいつは“嘘”だ」
「…ほぉ」
その少女の言葉に伯爵は淡々とした声色で相槌をうってみせた。
だが、その淡白な表情には若干の驚きに静かな怒りを混ぜ合わせている様に見える。
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