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そんな風に答えたオルロックを見て、彼女は不愉快そうに眉間に皺を寄せた。
「アンタさぁ、“本当”に何がしたいんだ?」
「…本当に私は貴女が言う様に戦争狂いなのかも知れぬ。 はたまたは、別の目的があるのかも知れぬ…しかし、一つだけは言える」
伯爵は初めてその場から動いた。
しかし、自らの足で歩んだのでは無い。
伯爵は地を滑って移動した。 僅かながら床から浮き、ホバーの様に滑って。
そして、オルロックはカーミラの目の前に立つ。
カーミラに彼の影が被る。
彼女よりも頭三つ分は大きい長身の伯爵。
カーミラは見上げた。 今の伯爵は陰り、真っ赤に輝く瞳しか見えない。
それはまるで燃え上がる太陽の様。
その小さな一対の太陽が小さな少女をまるで品定めするかの様に見つめる。
そして、彼女の目の前にぬっと出されたのは鋭爪が生え揃った細くミイラの様な皺だらけの手。
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