プロローグ

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コツ、コツ、コツ、コツ…   無機質な床をたたく音。   その音を響かせるのは1人の女性。 見たところ20代に入ったばかりだろうか。 白銀の髪に銀の両目。 ツインテールの髪型が輝きを残す。 しかし、腰にはその体に不釣り合いな日本刀のような剣。   コツ、コツ、コツ、コツ…   女性は考える。   2ヶ月前。   なぜあのような死に方なのか。   なぜ私はあの場所にいなかったのか。   なぜ…   コツ、コツ、コツ…コツ。 目的地についた。 私に何の用だ。 私はもう騎士ではない。 なのに、なぜこの部屋なのか。   よりにもよって、なぜ…姫の部屋に呼び出したのか。   コンコン。 ドアをたたく。   「入れ。」 男性…4・50くらいだろうか。 私は声の主を知っている。   ガチャリ。 私はドアを開ける。   中は何もない、白い空間。そんな感じを抱かせる部屋。 そこに4・5人の男がいる。全員研究者のような服を着ている。多分真ん中の一番年をとった人がさっきの声の主だ。   「………」   左端の17・8程度の若者が、 「挨拶も無しか?」 と声を発する。   「………」 ふぅ、とため息をつく。 とんだ無礼者、と思う。 『私を知らない。』 珍しい…のだろうか。     若者が、 「失礼な奴だな…」 とため息をつく。   私は真ん中の人に声を発する。 「…こんな礼儀のない人が居るから、軍に煙たがられるんですよ、ケマル=アラマンド。」   ケマルと呼ばれた人が返答する前に若者が女性に殴りかかる。 「テメェ、局長を侮辱するな!」   が、そこに女性の姿はなく、 「剣を納めろ、ルナ=ヴィスティーパ」 若者の後ろにルナと呼ばれた女性がいる。剣の切っ先を若者の首に突きつけて。   「すまない、私の教育不足だ。」 「…まぁ、いいです。私はこんな事をしに来たのでは無いですから。」 ルナは剣を鞘に納める。 「…それで?何の用です。まさかこの部屋を見せるため…とでも?」 「まさか…簡潔に言おう。カオル姫の継承者が見つかった。」   ピクッ 「…私には関係無い。」 「いや、関係はある。そして君が一番彼女を守る適任者だ。」 「それも違う。私は守れなかった。もう放っておいてください。私に彼女を守る資格は無い。」 「なるほどな。それが君の言い分か。だが…これを聞いてもそう言えるか?」 「?」 意味深な言葉を発し、そして間を空ける。   そして発される。運命を変える一言が。 「継承者の在所は…地球だ。」
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