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業々と燃えたぎる炎の中、一人の赤子を連れた夫婦がいる。
「このままではリミィア、お前達も……。これしかない」
何かを決意したような表情をして、男は右手を前へかざしそこに黒い球体を作った。
「それではクロノス様はどうなるのです? 私はクロノス様と一緒に居たいのです!」
リミィアと呼ばれる女性は涙を流しながら、クロノスと呼ばれる男に向かい叫ぶ。
「俺の一族は1500年の間この世界の秩序を守ってきた。俺には世界を守る使命がある。すまないが、それは出来ない。それと……この子には俺の力を半分託す」
「クロノス様……」
リミィアの腕の中で眠っている赤子の頬を優しく撫でて、クロノスは赤子の右手に力を注ぎ込んだ。
光が辺りを包み込んだ後、赤子の右手には微かに光る、白く透き通る石が埋め込まれていた。
「この子は頼んだぞ」
「わかりました、クロノス様……。生きて……ください」
「約束する」
リミィアはクロノスと目で合図を交わして、赤子を連れて黒い球体の中へ吸い込まれるように入っていった。
そして、その球体は炎の向こうにいる何者かが放った黒炎が入るのと同時に消えてしまった。
それを見たクロノスは表情を激怒の色に変えて走り出した。
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