2.少年の偉業

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ひっそりとした静かな通りに、その店はあった。 真っ黒な木造平屋。 木がこんなにも真っ黒なのは、この店が300年以上も前から、この地で多くの魔法使いをみてきていたからである。 シキ「……あれ?」 店の前に来て、シキは奇妙さに気づいた。 シキ「これは…?」 店の前には立て看板があり、『本日貸切』と書いてあった。 シキ「……もしかしたら」 小さく呟き、シキはドアを開けた。 シキ「こんにちはー。」 店内にシキが入ると、 店主「ほっほっほっ、来おったか。」 老人店主・オリバンダーは、柔和な笑顔でシキを迎え入れた。 シキ「ご無沙汰してます。あの、表の貸切の看板は……」 店主「今日はおまえさんの貸切だよ。」 シキ「……やっぱり、手杖の時がアレだったからですか?」 店主「そうじゃよ。いやいや、おまえさんの手杖を見繕うのには本当に時間がかかったからのぉ、ほっほっ。」 シキがアカデミーに入る時に、シキの手杖を選ぶ作業には3時間近くを要した。 持ち主の魔力を十分に魔法として表出するために、杖にも千差万別ある。 オリバンダーは、「杖が持ち主を選ぶ」と言ってはばからない。 しかし、それだけの杖の在庫数と店主の情熱があるからこそ、オリバンダーの店は300年以上、多くの魔法使いから愛され慕われてきたのだった。 店主「さ、準備は整っとるよ。どれからいこうかな?」 そう言って店主は店の一角に目線を移す。 そこには何百という数の錫杖が立てかけてあった。 シキ「本当に、準備万端ですねwww」 店主「勿論じゃよ。これでも魔力許容量の弱い杖は省いてあるんだがねぇ。さて……まずはこれからだ。」 オリバンダーは、赤褐色の錫杖をシキに渡す。
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