3.灰色の竜

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「うわぁぁぁあ!」 「きゃーーっ!」 遠くから人の叫び声がした。 ベル「な、なんだ今の?」 リオン「森の方からでしたね…」 ダッ! 次の瞬間には、シキはもう声のした東の森へと駆けだしていた。 アルク「お、おいシキ!?」 カエラ「あたしたちも行こう!」 他のみんなもシキを追う。 日は西に傾きかけており、空は茜色に染まっていた。 森の中は薄暗く、その中をシキたちは走って、ふと開けたところに出た。 そこには13~4歳の男女数名が腰を抜かして動けなくなっていた。 手杖を持っているところ、アカデミー生のようである。 シキ「おい、大丈……」 最初に現場に着いたシキは倒れていた生徒たちに近寄ろうとして、その生徒たちの目線の先に顔を向ける。 アルク「いた!」 カエラ「シキ、大丈…え……」 ほかの皆も追いつき、シキと同じように、あるものに目を奪われる。 そこには全長5mを超える灰色の竜が、倒れてた生徒たちを捕食しようとしていた。 シーラ「ド…ドラゴン!?」 リオン「この体と目の色…フロント・ドラゴン…かな?」 ベル「なんでこんなんが、こんなとこにいるんだ!?」 シキ「……Mハンから脱走でもしたのかな?」 そう言いながらシキは、カエラに青い円筒を投げ渡す。 シキ「カエラ、そいつを打ち上げてくれ。」 カエラ「ええっ、打ち上げるって……何なのこれ?」 シキ「信号弾だよ。Mハンでの、緊急連絡用のもんだ。導火線あるだろ?」 カエラ「えー…あ、あった。よしっ。」 カエラはシキの指示に従って信号弾の準備をする。 リオン「シーラ、あの子たちを安全なところで開放してあげて。」 シーラ「わかった。」 シーラは下級生のもとへ駆け寄る。 ベル「ど、どどどどうすんだよコイツ!」 アルク「攻撃していいんだよな?」 ベルは事態の急展開に慌てて、アルクは手杖を出して既に戦闘態勢である。 しかし、 シキ「や、攻撃はナシだ。」 と、シキが制する。 シキ「Mハンから逃げたものなら、出来るだけ無傷で返さなきゃならない。それにここからは市街地が近い。ヘタに刺激して反撃がきた時、流れ弾が街に飛ぶこともあり得る。」 アルク「じゃあどうするんだよ?」 シキ「ここは討伐じゃなく捕獲だ。安全かつ確実に保護する方向でいこう。」
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