831人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな山神さまは、人間らしく人間の娘に固定名詞を呼ばせることにした。
“御門(ミカド)”と付けた。
妖怪たちは様々な呼び方をするため、毎度桜月が困っていたためだった。
とは言っても、桜月と会話することなんて少ない。
ただ、何かと言って桜月は御門に泣き付いて来る。
愛らしい娘だから良いものの、毎度のように妖怪との宴会を怖がった。
妖怪が桜月をからかったりするのだが、妖怪もそれなりの愛情表現に等しいかもしれない。
あの赤子を育てると言ったあの日から、妖怪たちは猛反対していた。
それでも、あのまま人里に置いて行っても誰も拾いやしないだろう。
米も芋も採れない村には、自分たちだけで精一杯だったからだ。
そんな村に赤子を置けば、確実に弱って死んでいただろう。
.
最初のコメントを投稿しよう!