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〔天狐さま、赤子はどうしたのです?〕
一体の妖怪に尋ねられ、御門は口元を緩める。
(ちゃんと生きているよ。今年で六つになる。人間の成長は早いようで遅いな)
首を傾げる妖怪たちの背後から、〔その娘は?〕と尋ねられた。
はて、何処に行ったのやら。
キョロキョロと辺りを見渡して、桜月を探したが見当たらなかった。
〔どうやら妖怪に捕まったらしいですぜ。後ろが煩い〕
のんびりしながら話していた御門は、歩く速度を落として列の中を見回した。
すると、野狐の妖狐が桜月を取り合っているのが見えた。
小さな悪さばかりをする野狐と他の意見を聴き入れる善狐が、桜月の腕を引っ張り合って、桜月はびえんびえん泣いていた。
〔この娘はわしらが最初に見つけたんだ!横取りをするな!!〕
〔たわけ!この娘は天狐さまの餌だ。天狐さまの匂いが判らなくなったか!!〕
御門は呆れた顔をして、物分かりの悪い両者に声をかける。
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