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山奥の砦の向こう。
円を描いたその中央には、燃え盛る巨大の炎を囲ってどんちゃん騒ぎを起こしている妖怪たちと、そのまた一回りには座談を楽しみ、酒月を浮かべて酔いに呑まれていた。
妖怪たちの周りには、咲き乱れる桜の花びらに見とれている妖怪たちも数多い。
縦笛や太鼓、三味線に琵琶と妖怪たちが歌いだす。
舞を舞うその中には、妖しく美しい人がたをした妖怪がいた。
〔天狐さまだ。美しいですなぁ…〕
〔燐火さまは、善狐の後を継いで何百年になるのだ?〕
〔そんなん忘れた忘れた!天狐さまはとにかくお優しい方じゃ!この前見かけた時は、鮎を分けて下さった〕
〔忌ま忌ましい人間どもが川を汚したから、もう鮎はいないかと…‥〕
〔天狐さまが川を浄化して下さったお陰さ。人間は何も知らないくせに、感謝もしないで魚を捕って行くくせに〕
そんな妖怪たちの瞳に映るわ、朧月夜に揺らめく若き狐の神さま。
紙面を付け、稲穂の色をし長髪を束ねた“天狐”。
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