狐の祭囃子

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タライの中にある布をハラリと解いてみせる。 その刹那。 周りから悲鳴のような怒涛の声が沸き上がる。 〔貴様!山神さまになんて悍ましいものをっ‥!〕 〔いや、待て。赤子だ。人の子で一番弱い時で、食べ頃だ。食ってしまえばいい〕 口々にする妖怪たちを制したのは山神さまだった。 静かに。の合図を手で抑え、絹でできた着物を足で払い退けながら、山神さまはタライの中にいる赤子を覗き込んだ。 タライの中には、弱々しく息をした小さな小さな赤ん坊だった。 どうやら、産み落とされて数日しか経ってないのか、まだ首も据わっていないようだ。 (攫って来たのかい?) 〔人間がわちの住家に捨てて行きやした。生まれたのが昨日らしくて、その時はまだ血まみれでやした。おいしそうでやしたが、山神さまの供物にと〕 悪びれることは妖怪にとって論外以前だ。 人間の子供を食ってしまう妖怪なんてたくさんいる。 しかし、天狐はそんな人間の子供を食べたりはせず、むしろ可哀相に思えていた。
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