第九章 父親

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「…………息子?」 えーと、俺は父さんと母さんの息子であって、涼香ママの息子じゃない。 ……ん? ちょっと待てよ……今、未来のって言わなかったか? 涼香ママのたった一言で俺の頭の中に暴風波浪警報が発令された。 そのため、自然と脳内待機という状態になってしまう。 そして、対象となったもう一人を、恐る恐る横目にチラリと映してみる。 「勝手な事言わないで!」 咆哮。 事前に耳を塞いでいたから、然程煩くは感じないが、表情から見て取れるように、明らかに本気だ。 「こんなバカと一緒になんかならないわよ!」 「ふぅ~ん……そう言えば、涼香って初めて男の子を家に連れてきたわよね~」 「そ、それは……ただ荷物を持ってもらっただけで」 「じゃあ、家に上がってもらったのはどうして?」 「え~……それは……」 聞こえない。涼香と涼香ママが討論しているが、ずっと耳を塞いでいるから、会話が全く聞こえない。 塞ぐのを止めてしまうと、会話を聞くことが可能になるだろうが、何故か聞いてはならない気がしてたまらない。 だから、そのまま時間が過ぎていくのを、ただひたすら待ち望んでいたりする。
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