第一話 珈琲と本

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私は喫茶店の扉を開ける。 乾いた鈴の音。 「いらっしゃいませ」マスターの低く無機質な声。 私はカウンターのいつもの席に座る。 「珈琲を」 「畏まりました」 店内は薄暗くモダンな雰囲気。一見するとバーのようだが、テーブルと椅子の設備もしっかりしている。 ただ、そこに他の客がいるのを私は見たことがない。 メニューも変わっている。 注文できるのはただ一つ。 ブラックの珈琲のみ。 そして、マスターの気分によるがサービスとして不可解な事件を聞くことができる。 私はそれを推理する。 この喫茶店に来るのも、それが楽しみの一つだからである。 もう半年ぐらいは経つだろうか。 私が定年退職を迎えてからほとんど毎日通っている。
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