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「お待たせしました」
マスターは私の前に白いカップを置く。
中には何にも混ざらない黒。宇宙を連想させる漆黒。
そして、気品高い芳醇な香り。
炒りたての厳選された豆を使用している証拠だ。
一口。
「美味しい」
苦みのなかに深い味わい。
これこそが至福の一時。そう、私は思う。
「いつもと変わらない、この最高の味。私はこの店を見つけることができて本当に嬉しいんだ」
「恐縮です。
お客様、お喋りにお付き合いしていただく時間はありますか?」
始まった。
いつもの事件物語を語ろうとしているのだ。
「もちろんですよ」
「これは、私が若かった頃の話なんですが……」
静かにだが明瞭な口調で話し始めた。
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