第一話 珈琲と本

4/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
駅を出ると雨が降っていた。 傘を持っていなかった私は立ち往生していた。 コンビニで傘を買うのも億劫だったから近くの本屋に入った。 あまり大きな店じゃなくて、主人が一人レジがある机の向こうに座っているだけだった。 気付いていないのか私が入っても何も言われなかった。 それから、つい立ち読みをしてしまって30分程度その店にいた。 本から目を離すと、隣に男性がいた。そんなことにも気付かないぐらい没頭していたんだ。 さて帰ろうとしたときだった。 「おい、君。万引きしただろう?」 どうやら私じゃない。さっきの男だった。 「何を言っているんだ?」 「万引きしただろうと言ったんだ。その鞄を見せなさい」 「何も見つからなかったらお詫びしてくださいよ?」 男は右肩に掛けていた鞄を下ろした。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!