第一話 珈琲と本

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鞄の中からは財布や携帯。日常品がいくつか出てきたが、盗んだと思われる本は出てこなかった。 「そんな…おかしい。確かに見たんだ。お前が本を盗ったところを」 店主は狼狽している。 「だから、万引きなんてしてないんだ。客をお前呼ばわりとわな。慰謝料を貰いたいところだが、ここで謝れば許してやる。 さあ、どうする?」 「申し訳ない」 私はその店を出た。 もうすっかり雨はやんでいた。 ただ夜のとばりも降り始めていた。 早足で帰路に着いた。 車道や街中を進んでいた。ただ、仕方のないことだったんだが、ある道で人も車も一切見なくなった。 そして、真っ暗にもなっていた。 そのせいもあって、背後には注意が回らなかった。 突然体当たりされて左肩に掛けていた鞄を持っていかれた。
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