:第十一話:

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――― ―― ― (此処は何処だ……?) 聖人は気が付くと見知らぬ場所に居た 「どうして、人は人を傷付ける……」 (何だ、今のは自分なのに自分じゃない誰かが喋るような感覚は…… まさか、俺の無くした記憶か? だとしたら、これは夢か?) 聖人が見ている夢は赤い丘、まるで血を連想させるような赤い色 その丘の頂上に聖人はただ一人で立ちすくんでいた 「魔王っ!!!! 貴様は居てはいけない存在だっ!! だから、死ねっ!!!」 突如、聖人が見知らぬ男が切り掛かって来た だが……… 「フッ………」 夢の中の聖人は相手の斬撃をかわし干将で断ち切る 「お前も、俺をその名で呼ぶのだな…」 何て声を掛けてもたった今、切り捨てた屍は答えない ただ、血を流し続けだけだった (これが、俺の記憶だとすると俺は人を殺した事が有るのか…) 聖人は酷く悲しい感情が心の中にあった それは、恐らく記憶の中の聖人の感情 ひょっとしたら今切り捨てた男は顔見知りだったのかもしれない 「魔王か……何時から、そんな風に呼ばれる様になったんだろうな…」 声はただ反響する事も無く、答えてくれる者も無く、ただ飛散していく 「俺はただ皆が笑って居られる世界を望んで来たのにな…」 男の手は返り血で汚れ 「俺は……」 男はただ一人でこの赤い丘に立ちすくむ そうたった一人で……… (この俺は一体………) 聖人は、この愚直なまでな男の背中が酷く小さく想えた ――― ―― ―
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