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「そうか、異常はないみたいだな。」
父、義樹は娘の手をそっと握った。
椿は握り返せない自分の手の代わりに眼線を義樹に向ける。
「大地は?あいつはどうしてる?」
「あの子もとっても元気よ。最近は部活が楽しいらしくて‥。週に何回かはお姉ちゃんの様子を見に来てくれるわ。」
「大地も、もう中学2年になるのか。中学2年といえばちょうど部活が楽しくなるころだからなぁ‥。」
義樹は自分の学生時代を思い出すかのようにしみじみと言った。
そんな様子を見ながら、母、雪子は微笑んだ。それに気が付いた義樹は不思議そうな顔をする。
「―‥どうした?何か変なこと言ったか?」
「いいえ。そんなことないですよ。ただ、私は幸せ者だなぁと思って。」
微笑みながら義樹の隣へ座る。
「あなたと結婚して、椿が産まれて、大地が産まれて‥。あなたも子供達も健康でいてくれて。」
「雪子‥。」
「あとは、椿が良くなってくれるのを祈るだけね!椿も頑張ってるんだから、私も頑張らなきゃ。」
雪子はギュッとガッツポーズの構えをした。
その姿を義樹は黙って見ていたが、少し曇った顔付きをしていた。
「雪子、お前もちゃんと休んでるのか?この一年、ほぼ毎日椿の看病と家事とで疲れてるんじゃないのか?」
心配そうに雪子を見る。
雪子は大丈夫よ、と笑顔を見せた。
「結婚したときに2人で決めたでしょう?仕事はあなたが、家のことは私がって。それがあったから、あなたは仕事を頑張って今は立派な社長になられたんですもの。次は私が頑張る番だわ!」
「‥そうだな。でも、無理はしないでくれよ。椿もお前の事、心配してるんだから。」
椿もそうだ、というように母に瞬きをした。
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