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「―‥うぅ。やっぱり私は幸せ者ね。」
雪子は涙目になりながら、椿と義樹の手に自分の手を重ねた。
椿はその様子を見ていて、とても幸せな気持ちになった。
自分の身体がこうなってしまってからというもの、家族にずっと心配と迷惑を掛けてばかりだったということは誰に言われるでもなく自分でよくわかっていた。
だから、家族が幸せそうな顔をしてくれていることが椿にとっての一番の幸せだったのだ。
「じゃあ、そろそろ仕事に戻らないとな。」
義樹はよいしょ、と言いながら立ち上がった。
「‥"よいしょ"なんて、俺も年を取ったもんだなぁ。」
ははっと笑う。
「もぅ。それじゃあ、私まで年取っちゃったみたいじゃない。」
夫を見送ろうと一緒に立ち上がる雪子。
その時だった―‥
椿の顔が急に苦しそうに歪み、心電図の計測器がけたたましく鳴りだしたのだ。
「―――‥っ!!」
息の詰まるような苦しさを感じ椿はぎゅっと目を瞑った。
心臓が激しく脈打ち、心拍数が一気に上昇する。
―‥苦しい!息が‥!
声を出そうとするも、自分が喋れないためにぱくぱくと口を動かすしかない。
異変に気付いた義樹と雪子は急いで椿のベッドへ駆け寄る。
「椿!?椿!!どうしたのっ!?」
雪子はおろおろと椿の手を取って娘の顔を覗き込んだ。
「―‥先生!早く来てください!娘の様子がおかしいんです!」
義樹はベッド脇にある緊急ボタンを押して主治医に助けを求める。
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