第一章

5/8

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
椿はなおも苦しんでいる。 速くなった鼓動は止まりそうもない。まるで、耳元で心臓が脈打っているようだ。 ――‥ドクン!ドクン!!ドクン!!! 「――‥!‥!!‥‥!!!」 身体が小刻みに震える。心臓の動きについていけず、身体が拒否反応を起こしているようだった。 目を開けてみるが、ぼやけてうまく見えなかった。かろうじて自分の左手に二つの影が見え、それがさっきまで部屋にいた父と母であることがわかる。 表情まではわからなかったが、きっと両親のことだからとても心配した顔をしているに違いない。そのことを思ったとき、また椿は申し訳ないと思った。日々の生活でさえ家族に迷惑をかけ続けているのに、また自分の身体に異変が起きてしまっているのだ。 少しでもその気持ちを伝えるために霞んだ目で父と母の方を見る。 「椿!もう少しで先生が来てくれるから、‥だから、だからもう少し頑張って!」 母がそう言うと同時に病室の扉が開いた。 バタバタと白衣の医者や看護婦が部屋に入ってくる。 「椿さん!どうなさいましたか!?」 眼鏡を掛けた男がベットへ駆け寄る。 「八神先生‥!椿が、急に苦しみだして‥!心電図も普通じゃなくなって‥。」 雪子は八神に訴えた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加